本の紹介「呆けたカントに『理性』はあるか」

呆けたカントに『理性』はあるか(大井玄 新潮新書、2015)を
読みました。
認知症で、日常のコミュニケーションが難しい患者であっても、
「胃に穴を開けて栄養を入れても良いですか?」と問えば、
ほとんどの患者が顔をしかめて首を横に振るのだそうです。
著者は、認知症であっても理性的思考が残されていると
述べています。
そこからさらに、理性と情動から人間の判断ついて掘り下げていきます。
話は哲学や宗教、思想に波及し、なじみにくい部分もありましたが
高齢者の意思を尊重することがいかに大事であるかを再考しました。
そして最終章の哲学者カントの終末期の様子に胸を打たれます。
老いて、認知機能、身体機能が低下しても「人」として尊厳をもって
接していくこと。接する自身も「人」であることに立ち返ることができる
1冊です。(鴇田)